3rd episode

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時間はすでに深い闇が降りるほど気色は真っ暗で、永遠亭の周りをを囲む竹林のざわめきと、2人の男女の話し声だけが聞こえている。 「・・・それは良かったです。 貴女はなんかヤバイ気がするので戦いたくはないですし。」 「そう?案外良いところまで 行けるかも知れないわよ?」 「それでも良いとこ止まりじゃないですか、結局俺は殺される運命に変わりはないですよね?」 「案外頭は良い方なのね?けど、それだと貴方は自分の命が大事だから負ける勝負はしないと言う風に聞こえるんだけど。」 「それは違いますよ。自分にとって価値の在るもの、絶対に必要なモノは絶対に守ります。たとえ、紫さんに背こうとです。」 「貴方の必要な絶対的価値の あるものって何なの?」 「人との繋がり、ですかね。」 「そう、なら、私が今すぐこの永遠亭の住人を何らかの理由で殺すと言い始めたら貴方は私に刃を向けるのかしら?」 「・・・紫さんはそんな事しないですよ。」 「何故?」 「紫さんはこの世界が大好きな筈ですし、それに貴女なら、仲間が間違った道に進んだら正しい道に戻してあげる、そういう人だと思ったからです。だから、紫さんは永遠亭の皆を殺せないです。」 「随分と分かった様な口を聞くのね。だけど、とても良い意見だわ。」 「ありがとうございます。」 「貴方はこの世界を気に入るかしら?」 「もう70パーセントくらい気に入っているつもりです。このまま住んでもいいかなって。でも・・・」 「自分の過去が気がかり?忘れているというのは好都合じゃないの。過去の事なんか気にせず幻想郷で暮らしていけるのよ?」 「それじゃあ駄目な気がするんです。それじゃあ自分に嘘をついて生きていく事になってしまう。それじゃあダメなんです。」 「人間なんて生き物は生きていれば大抵ウソをつくわ。それは人の為を思いつく嘘もあれば、他人を騙す為につくウソもある。貴方のウソは自分の為につくウソ。許される事なんじゃない?」 紫の言葉に顔を俯かせる。そして、少し笑みを浮かべて口を開く。笑っているのではなく、自虐的な、自分に対しては責めているような、そんな笑顔で。
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