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「うーん・・・うるさいなー。
こんな時間に何・・・?」
鈴仙・優曇華院・イナバは、外で絶えず聞こえる金属音で眼を覚ました。部屋の中は暗くまだ夜だということがわかるくらいに。一体、こんな時間にどこの誰が庭で騒いでいるのだろうか、そんな事を思い、眠い眼を擦りながら体を布団から出して庭に繋がる障子を開ける。
「な・・・にこれ。」
目の前の光景に彼女の眼は見開き急激に脳が活動を始める。そして状況の理解。壮絶に剣の攻防を繰り広げながら無言で戦う青年少女の姿があった。
「・・・もう2時間近く戦っているわよ、あの2人。何も喋らず周りの事は見えてないみたい。」
永琳はずっと見ていたらしい。腕を組ながら真剣な眼差しでこんな緊迫感のある戦いを。
「お師匠様・・・2時間もですか・・・。」
有が右から剣を振るえば紫はそれを受けとめ左脚で脇腹を狙う。それに気付き体を浮かせて紫の頭上を縦回転しながら飛び越えてその勢いのまま剣を再び振るうも、紫は自分の体をわずかに左に反らしてそれをかわし空中で身動きの取れなくなった有の体を貫こうとするが、空いている左手で刀身を掴み勢いを殺す有。
「紫さんは・・・
能力を使わないんですね。」
「有はまだ能力が覚醒していないからハンデをつけたのでしょうけど。にしても、あの戦い方、すごいわね。」
「紫さんですか?」
「いえ有よ、なんというか・・・命があれば問題ないと言わんばかりの無茶な戦い方。だけど威圧感がある。」
「・・・確かに、有さんの体ボロボロですもんね・・・。」
それでも有は表情一つ変えず標的である紫から視線を外さず剣を振るう。それに対して紫も目立った外傷は無くも鋭い眼光で有を捉え一挙手一投足無駄なくかわし続ける。 互いが剣を振るえばぶつかり合い鈍い金属音が響く。
そして勝負は呆気ない程、
簡単に決着がついた。
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