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鍔迫り合いの後、両者は後方に下がり体勢を立て直すと同時に直進して互いを斬りかかる。有は右から、紫は左から。
「これは・・・」
永琳が言葉を漏らす。有と紫の首にはギリギリで止められた互いの刃が突きつけられていた。それが何を意味するのか、2人は剣を下ろして見つめ合う。
「これは引き分け・・・かしら?」
紫が苦笑いを浮かべながら呟く。そして有もそれに釣られ苦笑いをして
「・・・いえ、俺の方が怪我を沢山していますし紫さんの勝ちじゃないですか?」
「それもなんだか私としてはスッキリしないのだけど・・・今回は引き分けにしましょう?で、お互いが勝った時の条件は、有はこの世界でゆっくりと過ごしながら私に叶えて欲しいことを考える、というのはどう?」
「・・・そうですね、そうしていただけるとありがたいです。」
「決まりね。」
これが決着。呆気ない程簡単に、されど大切な時間が幕を閉じた。互いが互いを認め合うこの条約は、取り引きとかそういう小難しい事は無しにして有という人間が幻想郷に認められた瞬間を決定付ける証拠である。
「うっ・・・。」
胸を押さえて方膝を地面に着ける有。
「大丈夫かしら?少し無理をし過ぎたのではない?」
「大丈夫です。これくらい慣れ・・・て・・・ま・・・。」
そのまま地面に倒れる。永琳は鈴仙にクスリと包帯の準備を促し紫にはスキマで有の体を診察室まで運ぶように頼む。彼女も責任を感じているらしく快く引き受けると有の体をスキマに入れる。時間はもう、空が明るくなってきた。
その後の事は、特に何もなく昼頃には有は眼を覚ましたらしい。その時には紫はもう居なく、永琳が自分の机で仕事をしている様だった。そこにタイミングよく輝夜と鈴仙が診察室に入ってきて、輝夜がヅカヅカと有に近づくと平手打ちを一発食らわせたそうだ。
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