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次の日、紫との戦いから一夜が開けた。昨日一日は体を休ませることにしてゆっくりとしていた有は朝早く起きて庭で剣の素振りをしていた。
「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・。
まだまだ俺も未熟者だな・・・。」
一旦、素振りをやめて呼吸を整える。永遠亭はまだ、さほど騒がしくはない。空には朝日が上り空気は清み渡っていて清々しい。だが、剣を握るてには自然に力が入ってしまう。昨日の紫との戦い。彼女は本気を出していないのにも関わらず、有は彼女に追い詰められた。それは単に人間と妖怪の格の違いと言うわけではなく、技量の差。
有の体はボロボロなり、紫は傷一つついていなかった。最後の一撃、首もと剣を突き付けるのは同時だったがその前の動作は隙がありすぎた。真正面から互いが突っ込んできたから紫は有の動作を確認してから隙をつく、ということが出来たはず。それをしなかったと言うことは。
「どれだけお人好しなんだ・・・
紫さん。」
わざわざあの条約を交わすために有の動きと合わせ引き分けに持ち込んだ。と、考えた方が納得はする。でなければ有は今ごろ命は無かった筈だから。
「あれ?有さん、こんな朝早くに何をしているんですか?怪我はもう痛みません?」
ウサ耳の少女、鈴仙がいつものブレザー姿ではなく白いパジャマ姿で有を見ていた。
「・・・ちょっと訓練をな、怪我はもう痛まない。永琳さんと鈴仙に素早い処置をしてもらったからな。ありがとう。」
「いえ、私はお師匠様の言うとおりに動いただけですから。特に私がした事はないのですよ。」
彼女は少し恥ずかしいのか手を横に振りながら顔を赤くしている。
「そっか、まぁでも助かったのは確かなんだし。そんな謙遜しないでくれよ。」
「はい、じゃあお気持ちはありがたく受け取っておきますね。それでは私は支度があるのでこれで。」
一礼して鈴仙はそのまま台所へ向かっていってしまった。それを見送ると、有も白い長剣の姿を消して自室(客間)に向かっていった。
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