1st episode

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竹林の中にひっそりと佇む木造建築の古ぼけた家。中は必要最低限の生活物資が置いてあるだけで部屋の真ん中には囲炉裏がある。床や壁も木造で所々傷が目立っている。 「・・・・・ん・・・。」 少年は目を覚ました。体を起こすとそこは少年が見知らぬ場所。部屋の中を見回し状況を確認しようとすると、その途中で白髪の少女が目に入る。 「おう人間、目を覚ましたかい?」 少女は囲炉裏の火から起き上がった少年へと目を向ける。 「えっと・・・あの・・・。」 「あ〓・・・私は藤原妹紅(フジワラノモコウ)だ。そしてここは私の家だ。理解したか?」 「ありがとうございます。俺は水無瀬有(ミナセユウ)です。あの・・・助けてくれた・・・んですよね?本当にありがとうございます。」 少年は一言お礼を告げ軽く頭を下げる。妹紅は目は向けないものの、行動の気配を感じとったらしく口を開く。 「礼には及ばない。当たり前の事をしただけだからな。ま、怪我もないみたいだしよかったよ。んで?あんた人里の人間か?」 「人里・・・?」 「違うのか?てっきり医者に用があってあの竹林に迷い混んだとばかり思っていたんだが。」 妹紅の言葉の意味が理解できていない。それどころか今まで自分が何をしていたのかすらも覚えていない。いわゆる記憶喪失だった。 「すみません・・・ちょっと覚えてなくて。自分が今までどこにいて何をしていたのか・・・。」 「・・・そうかい。まあ、気を落とすなよ。記憶なんてひょんな事で戻っちまうもんだからさ。」 気を使ってなのか、妹紅はニコっと微笑み少年を励ますような言葉をかける。有は少しばかり凛々しくも明るい笑顔に心が揺れた。
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