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その後、有の腹の虫が鳴いたのを妹紅がクスクス笑いながら筍を焼いてくれた。皮付きのまま焼かれる筍は豪快な姿であったが独特の良い匂いが部屋中に漂う。
「妹紅さんって炎を操れるんですか?」
「ああ、ちょっと訳ありでね。って、驚かないのか?私が火を操っていること。」
そう、妹紅は手に出現させた火を囲炉裏に灯し火加減の微調整を行っていた。そのお陰で筍もこんがりと良い具合に焼ける。
「ちょっとは驚きましたけど、何かかっこいいなーっとも思いました。」
「変な人間だねー・・・ま、そういうのは嫌いじゃないけどさ。」
ほらっ、と有に筍を投げ渡した。熱いのか筍でお手玉をするような行動をしり目に妹紅はクスクスと笑いながら自分の筍の皮を剥いた。中からは湯気と同時に匂いも放出され食欲をそそる。
ようやく熱さに慣れてきたのか、有も筍の皮を剥き始める。その間に妹紅はすでに半分くらい食していた。
「ところで有、お前はこれからどうするつもりなんだ?いつまでも私のとこで置いとくにもいかないからな。」
「正直わからないですね・・・。行く宛もないですし・・・。記憶が戻らなければどこに戻れば良いかなんてわからないですし・・・。」
皮を剥き終わった有は早速タケノコを口に運ぶ。一かじりするとタケノコの甘味と豊潤な匂いが口に広がる。有は無意識に「うまっ。」と呟いた。
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