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考えていた。結果は大体分かっていたのに、悔しくなった。すごく、スゴく、凄く悔しくなった。何でか分からない。
「たかが勝負に負けたのに・・・。」
涙は出ない。ただじーっと天井の木目を見つめて考える。手も足も出ない弱い自分が嫌になった。許せなくなった。考えたくないのに、目を瞑ってもその光景が浮かぶ。
「何でこんなに・・・考えるんだ?」
たかが勝負。幻想郷では、余程の事がない限り命を賭けた勝負は行われない。あくまで勝負は“ごっこ“だと、説明を受けていた。だからこんなに悔しがる事もないはず。だけど有の心は落ち着かない。
「有・・・?入るわね?」
そんな時、聞きなれた声が聞こえた。有は襖に顔を向ける。そして小さな声で呟いた少女は、ゆっくりと音を出さないように襖を開いた。
「輝夜・・・さん。」
寝ながら部屋に入ってきた輝夜を見る。
「起きてたの?明かり・・・明かりは・・・。」
「点けないでもらって良いですか?ちょっと落ち着きたいので・・・。」
明かりを点けようとする輝夜を力のない声で止める有。輝夜も「わかった。」と言うと有に近寄り畳の上に座る。
「・・・。」
「・・・負けちゃったんだって?」
「ええ、見ての通り体はボロボロですよ。」
「知ってるわ・・・貴方、血だらけでここに運ばれたんですもん。」
「そうなんですか・・・。」
沈黙。数十秒の沈黙の後、再び輝夜が口を開く。
「そういえば私ね妹紅と話をしたの。ちゃんと分かってくれるかどうか不安だったけど、とりあえず理解はしてくれたみたい。でも、弾幕勝負はやり続ける事になったわ。今度は殺し合いじゃない、純粋な勝負でね。」
嬉しそうに話す輝夜に対し、有の表情は暗くなっていく一方である。
「純粋な・・・勝負・・・。俺はそれに負けたんです。しかも、何も出来ずに。悔しいですよ・・・。何でか分からないけどすっごい悔しいです。」
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