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完全に気が抜けていた有は、永琳に不意をつかれ接近を許した。というかもう体が密着して永琳は有の首に自身の腕を絡ませる。もちろん対面である。
「あ、あの永琳さん?これはどういう・・・」
顔を赤くしながらも永琳の眼を真っ直ぐ見つめて問いかける有。永琳も顔を赤くして据わっている様な眼で見つめ返しながら
「私ね?ずっとこういう風に誰かに甘えてみたかったのよ。普段はしっかりと気を張っていなきゃいけないし、内心疲れてたの。でもね?有が大人っぽく成長してくれたおかげで私の理想の男性像になってくれた。こんなに近くに素敵な男性が居るのに、何もしないわけがないでしょ?だから・・・。」
キス。正真正銘のキスを交わした。今度は誰も邪魔をされず、けれども違う相手との接吻。長くて短いような一瞬の甘い時間が過ぎ、口を離すとまたお互いに見詰め合って
「・・・ありがと、何も抵抗しないのね?」
「すみません・・・。」
「謝らないの。私が勝手にやった事なんだから・・・。すべて私の責任よ。」
自分を責めながらも甘える声で有の胸に顔を埋める永琳。
「ちょっとだけ・・・こうしてていいかしら?」
「はい。僕は構わないですよ。」
有の手が自然と彼女の頭に手を置いてゆっくりと撫で始める。すると永琳は
「・・・駄目だなぁ私・・・。姫様の幸せを願う立場のはずなのにこんな自分勝手な事するなんて・・・。駄目だなぁ・・・何で我慢できなかったのかなぁ・・・。」
泣いていた。普段の気丈で気高く気品がある彼女とは程遠い、もろく壊れそうな少女。そんな彼女を有は優しく抱きしめた。
「あまりに溜め込んだストレスは爆発するものですよ。立場なんて関係無く感情があれば誰だってあるはずです。だからたまには、誰かに甘えたって良いんですよ。」
「ありがとう・・・有・・・。」
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