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妹紅の言葉に押されることなく、少女はゆっくりと彼女に近づく。やがて、有がいる辺りで止まればまた口を開く。
「私、今とっても暇なのよねー・・・。少しだけ遊んでいかない?」
「同じ事言わせるな。今日はそういう気分じゃないんだ。さっさと失せろ。」
妹紅も彼女に背を向けたまま言い放つ。それに対して少女はクスクスと口元を着物の裾で隠しながら静かに笑う。
「ふふ・・・それが可笑しいのよ。満たされることのない私に対しての復讐心を持つあなたにとって、暇さえあれば私を殺したいあなたにとって、果たしてそんな気分の問題で片付けられるのか。」
「・・・・・・・。」
竹林に無数の葉鳴りの音が響いた。静寂で重苦しい空気の中で妹紅は無言のまま去っていった。残された有と名も知らぬ少女。
「・・・で、貴方は何か用があったんじゃないの?」
「えっ?あっ!いやその・・・こちらに凄い医者が居ると聞いたので・・・。」
完全に空気になりかけていた有は、急に喋りかけられたことにより少しだけ動揺してしまった。そんな様子に少女はクスクスと今度は屈託のない笑顔を見せた。
「そんなに固くならないでいいわ?蓬莱山輝夜(ホウライサンカグヤ)、私の名前よ。貴方は?」
「俺は水無瀬有って言います。」
「そう、じゃあ有って呼ぶわ。」
彼女からはどこか格式の高い気品の良さが出ているのだが、この人当たりの良さはなんなのであろうか。
「医者は私の身内なの。着いてきなさい。案内してあげるから。」
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