第1章

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「俺、学費払う為にバイトしなきゃいけないんで」  部長の目を見返しつつ言う。俺は親にこの大学の莫大な入学費を払ってもらっている。その上で更に部費なんかも出して貰うなんて、俺には出来ない。そんなことをして親に迷惑かけるなら今ここで喧嘩になってもコイツに反抗してやる。さぁ、どうするんだ部長。そう瞳で語りながら睨む。さすがにメッセージは伝わらないだろうが闘魂は伝わっているはずだ。 「……そうか。見所はありそうなんだが、仕方ないな。他の3人はどうだ!?」  少し睨み合いになったが結局意外にもあっさりと部長は身を引いて他の3人に向かう。視線がそちらに行き3人はビクっと肩を震わせた。 「えっと、俺はもう違うサークルに入っちゃったんで」 「お、俺は母ちゃんが病気で妹の世話が……」 「僕は運動苦手だから……」  各々にこの場を済ますべく言い訳じみた理由を吐き出した。  空気がピンと張り詰める。部長が3人を真剣に睨み回し、硬直した3人は視線を空に漂わせる。居心地の悪い一瞬が過ぎ、部長が口を開いた。 「……お前らの言い分は分かった。」  部長は一人一人指差しながら言う。 「サークルに入った奴を引き抜くのはタブーだからな、お前は諦めよう。次のお前、同じ体育大学に入った仲間として嘘を言っていないと信じよう。諦める。しかし、お前」  最後の3人目をビシッと指差す。 「運動が苦手、と言ったな」  俺からもっとも遠い位置に立っている一人が部長の眼力に怯える様子を見せつつもコクンと頷く。部長が安心させるようにニカッと笑みを浮かべながらまくし立てた。 「これは俺達先輩がみっちりと特訓を仕込んで得意にしてやるから問題ない! 体力作りから筋力の引き出し方、柔道の極意なんかを例え俺が引退してもOBとして教えてやるから安心して柔道部に入るのだ!」
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