第1章

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 部長は最後の一人の肩に手を回し、「これで柔道部は存続か! はっはっは!」と豪快に笑った。  言い訳が通った二人は逃げるように人混みに消えて行った。  がっちりと首を拘束された男子生徒は完全に入部する空気になってしまってどうしようも出来ずにいる。  回りの人々はこの場を囲むように立って威圧感を醸し出しているOB達のせいか目線さえこちらに向けようともしない。  鳥の囀りが聞こえ木々のざわめきや桜の花びらなんかがいかにも平和で爽やかで希望溢れる朝だというのに、こんなところでちっぽけな一人が望まぬことを強要されている。そしてそれを周りは助けるどころか見ようともしない。  絶対間違っているのに、それを誰も止めない。助けない。  空気に飲まれている男子生徒が縋るような目線を漂わせるも、誰にも目が合わない。当然だ。皆見ていないのだから。そのうちに男子生徒は俯いて何かを諦めたようだった。  俺はそんな様子を見て、何かが違うと感じた。  違う。世界は、こんな、無感情じゃないはずだ!  気がつけば俺は部長に一歩を踏み出していた。
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