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『やはり、免れることは出来ないのですね?』
枯れた声が薄暗くも高潔な部屋に響き渡る。
晴れの日だと言うのにカーテンを閉め切っているせいか、「高級な色合い」を放つ赤い絨毯すらも赤黒く見える...
『では..ごきげんよう...』
再び枯れた声が響く。
部屋の奥には漆塗りの大きな机がありそこには老人が座っている。
ゆっくりと受話器を置いたその黄土色の手には、「深い年月」を想わせる数々の皺が刻まれ、「かつての紳士が着た服」を纏う小さな身体は折れ曲がり、微かに震えている様にも見える。
傍には軍服を着た大きな体を持つ【厳つい男】がいるが、仁王立ちをしたままピクリとも動かない。
そして見た目にも秀才の香りを放つ細身の【黒斑眼鏡の男】が窓と窓の間の椅子に座り膝に置いたラップトップで何かをしている。
入ってきた瞬間には気が付かなかったが少し離れたところには滅多に声も顔も出さない、【正体不明の双子】(兄と姉らしい)が気配を消しながら佇んでいる。
この双子が喋る事は少なく、
常に「黒い仮面」を被っている為に感情をみせる事も少ないが...
この時だけは「何か」を感じ狼狽えていたようにも見えた。
『ついに...戦争なのですね?』
沈黙を破ったのは、一見して重たそうな扉の前にいる【若い従者】だった。
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