厭きれ

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しかし自由のない平和は、 人にとって苦しみでしかない。 『行方は管理社会か...』 刑務所にも似た薄暗いコンクリートの空間に、 「空腹時の腹の音」の様な唸り声が響いた。 その声を出したのは、黒い衣を何重にも纏う、 【黒斑眼鏡の男】だった。 恐怖にも似た孤独感により独り言を呟くのは、 「此処」(脱落者収容施設)では在り来たりな事だが... 今の状態でのこの男には「不注意」の出来事でしか無かった。 すぐに、15m程の距離はありそうな対角線に居る、 【痩せた男】がその声に敏感に気が付いた。 『今なんか言ったか?』 眼鏡の男は少し顔をしかめて、 下を向きながら目を逸らした。 『いえ...何でもありません』 確かに聞こえるはずの大きさの声で言ったはずだが、 この展開に覚えが無い訳でもなかった。 『なんだって?』 (ああ...やっぱり)
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