厭きれ

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「無所属」 かつては伝説までも作ったが... 現在の日本兵でこの言葉を知る者は少ない。 『...あの…伝説の特殊部隊か?』 目の前に居る男がそう小声で言うと、続ける様に名乗る。 『俺は真の慈と書いてシンジだ...貴方は?』 (驚く事に自ら名乗りだし、 更には『貴方』なんて...) しかし言われてみると、 大戦中の経験や、おぼろげに脳裏に映る【光】と、此処までの経緯と任務は覚えているが... 名前だけが思い出せない。 むしろ名前なんてあったのか... 『私は...そうだな...』 眼鏡の男は少し考えた。 真慈は、男が再び何処かへ行きそうな顔を見て、肩を少しだけ揺すると、男はそのまま顔だけ真慈の方に向けた。 『あぁ..そうだな。』 (なんとでも呼んでくれ) と言いたかったが、 ゆっくりと何かを思い出す様に三度だけ短い顎の髭を均すと、 ふと頭の中に「ある生き物」が鮮明に思い浮かんだ。 そして静かに、しかしハッキリと「一言」だけ、 『狐(キツネ)』 と名乗った。
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