序章『少女A』

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 地獄だった、私にとってそこはまごう事なきそれだった。  私の周りには瓦礫が散乱していて、あちらこちらでまだ火の手が上がっている。  私はそれを呆然と眺め、転がっている死体を見つけては目をそらす。  ああ、なんということだろうか、漸く家から這い出してきたと思ったらこの有り様か。  私はもうとにかく何もかもが嫌になっていた、どうしようもなくやるせなかった。  いっそこのまま、倒れてしまおうか?。  ふとそんな考えが頭を過る、何しろ私は重力との戦いに既にかなり劣勢だったのだ。  この状況の中私の脳内では、恐らく原因となった光景が蘇っていた。  それは突然の事だった、地震の様な揺れと強烈な光、そして家が崩れ、家具が倒れ私は意識を失った。  それから生き埋めになった私はなんとか外に出ることができたが、それには恐らく2日程度かかっていた。  食事もろくに摂れず、体は傷だらけになっている。  満身創痍という言葉がよく似合う私だったが、外に出ればなんとかなるかも知れないという希望に支えられてここまで来たのだ。  故にここは私にとって、間違いなく地獄だった。  やがて視界すらも朧気になり、重力に逆らう力も失い、地面に口付ける。  体も、心も、ここが限界だと私に告げている。  そして私は、それを否定する事もできないまま意識を失った。 「ディケイド……」   †    荒れ果てた町で、一人の少女が倒れた。  必死に希望を抱えて頑張って、けれども最後にはまるで地獄だと絶望しながら倒れた。  この惨状を造り出した者が居る、世界を破壊した者が居る。  悪魔と恐れられるその者の名は……。          
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