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   帰路とは反対方向の切符を買い、電車に乗り込む。  席に座り、バッグの中をガサガサとあさる。  カラン…  私の子どもの頃からのお気に入りの、缶入りのドロップが手に触れる。  それをバッグから取り出して一粒口に放り込んだ。  オレンジの味がゆっくり口の中に広がる。  あ、夕日の味みたい。  電車の窓から見える景色に目を映しながら、ぼんやりと思った。  今日は通勤で利用している駅から二駅離れた所で電車を降りる。  この辺りは最近、新しい店が次々とオープンしているスポットだ。  口の中でドロップを溶かしながら駅の改札を抜ける。  何となくワクワクした気分になってきて早足で出口に向かうと遠くの方からゴロゴロと雷の音が聞こえてきた。  
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