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駅の構外に目を向けると、空が明るんできて雨音も止んでいた。
そろそろ外に出ようと、もたれ掛かっていた柱から身体を起こす。
近くに人影を感じる。
ゆっくりとその人影の方を向くと、先程の雨に濡れたスーツの人だった。
「……」
「…?」
お互いの間に沈黙が流れる。
辺りをキョロキョロと見回してみたが、その人の視線は間違いなく私に向いていて。
先程、ガン見した事で文句でも言われるのだろうか?
私は落ち着かない気持ちでこの状況をどう切り抜けようか考えていると、向こうから話しかけてきた。
「あの、人違いだったら申し訳ないんだけど…もしかして、広田彩?」
「……」
私は無言で固まった。
今、目の前に居るこの人は私の事をフルネームで呼んだ。
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