一頁目 力と叡智

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『それにしても、何故『下級悪魔』が再び人間界にやって来たのでしょう?』 『神の腕』はそう言って『聖書』をカタカタと揺らす。確かに、今日のキマイラはおかしかった。 今までの『下級悪魔』は全て、『ゴエティア』を効率よく探す為に一匹ずつ現れていた。しかし、先程やって来たキマイラは、何故か集団でやって来たのだ。 『ゴエティア』の封印は解かれ、もう人間界に来る必要は無くなったのに、だ。 「解っかんねぇなぁ~」 俺は考えるのを止め、身体を後ろに倒おして地面に寝そべる。そうして見えた空は無駄に青く、先程まで『悪魔』と戦っていたのが嘘の様だ。 俺は隣に置いていた『聖書』を手に取り、パラパラと頁を捲っていく。そして、十数頁目で手を止めた。 開かれた頁には、妙にゴテゴテした籠手の絵が描かれている。『神の腕の籠手』と呼ばれる『天武具』だ。 『神の腕の籠手』は、文字通り、『神の腕』が使っている籠手だ。力と戦を司る『天使』の武器だけあって、凄まじいパワーを秘めている。 見た目の割には軽いしな。俺は『聖書』を閉じ、どっこいしょ、と何とも年寄り臭い事を言って立ち上がり、屋上を出る。 その時、屋上を気味の悪い風が吹き抜けていった気がした。
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