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見付けた。我はニヤリと笑う。
多少のリスクを払い、『下級悪魔』共を使って『聖書の読者(サルミスタ)』を足止めした甲斐があった。漸く我の『生贄(サクリファイス)』が見付かった。
笑う我の『本越し』に見えるのは、二十代前後の『本』を読む青年。しかし、青年は虚ろな目をしており、ロボットの様にどこかぎこちない動きで『本』を捲っていく。
さぁ、早く!
早く頁を捲れ!
我を呼び出すのだ!!
我は聴こえぬ声を叫ぶ。すると、青年は頁を捲る手を早めていき、丁度真ん中の頁に達した時、青年はビクリと震え、ゆっくりと頁の中心に手を置いた。
そして、カパ!と口を開く。
さぁ呼べ!
我の名を!!
「『意思を持つ叡智(ダンタリオン)』……」
瞬間、青年はバタリと倒れ、辺りを漆黒の波動が覆い、我の身体が『本』を通して少しずつ現れていく。
目の前には、先程『本越し』に見ていた青年が倒れている。我は腰に下げた『本』を一冊手に取り、青年の上に置いた。
すると、青年の身体は砂の様に崩れ、消えていった。我は笑う。
『本達』も我と共に笑い始める。そして、我は四冊の『本』を取り出し、重ねていく。
『さぁ、我が『本達』よ。他の『悪魔』に気付かれぬ様に『門』を探し出し、我の元に連れてくるのだ!』
我はそう言って『本達』を天に放り、腕を振るう。すると、『本達』は一瞬ビクリと震え、まるで翼があるかの様に四方に散っていった。
『クハハハハハハハ!!』
我は込み上げてくる笑いを抑えることが出来なかった。辺りには我、『意思を持つ叡智』の笑い声が響き渡っていった―――。
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