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ちょうどその時、カナの携帯電話が鳴った。カナは、折り畳み式の携帯電話を開くと液晶画面を僕に見せて、ほら、さっき話した彼からよ。と言って電話にでた。
液晶画面には「勇介」と表示されていた。
襟元にあるブローチのなだらかなラインをした宝石に裸電球の灯りが反射して暗く濁っている。
「今から迎えに来てくれるって、暗いし危ないからって、すぐ近くだから大丈夫って言ったんだけどね、心配性なのよ、彼」
カナは電話を切ると、バックの中からデジカメを取出しながら言った。
デジカメのレンズを自分の方に向けて僕に寄り添い、久しぶりだしさ、記念撮影。と言うと、赤いマニキュアを塗った細い指でシャッターを切った。
僕の左肩に乗せたカナの右手からは高級そうな香水の甘い匂いがした。
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