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児童養護施設を通り過ぎて最初の四つ角を右に折れると、左手に公園がある。
四方をフェンスで囲ったバスケットコートとアスレチックや砂場やブランコなどの遊具が配置されているエリアの間を遊歩道が伸びて境界線になっている。
僕達が遊んでいた頃は遊歩道もバスケットコートもなくて、その場所には公民館が建っていた。
古いモルタル造りで、地域の老人達が集まり茶を飲みながら囲碁や将棋を指していた。
公民館の向かいにある青いトタン屋根の住居は昔、駄菓子屋だったが、今は入り口の扉や窓はコンクリートで固められている。
まるで巨大な牛乳パックの容器みたいで、中に人が住んでいる気配はない。
牛乳パックがまだ駄菓子屋だった頃、店の前にはベンチが置いてあった。
当時、仲のよかったウエハラは毎朝そのベンチに座って僕を待っていてくれて、一緒に通学した。
ウエハラと出会ったのは、小学3年生の時で夏休み明けに僕のいたクラスに転校してきた。
父親の転勤が多いらしく、小学校に入学してから三回目の転校だと言っていた。
ウエハラは眼鏡を掛けていて色白でおとなしい奴だった。皺一つ無い綺麗な白いワイシャツに紺色のベストをよく着ていて、育ちの良いお坊っちゃんという印象だった。
初めて話した内容とか仲良くなったきっかけは不思議と覚えていないが、三年生の時に出会って六年生の一学期までは毎日のように遊んでいた。
六年生になってすぐに父親の転勤が決まったらしく、また違う学校に転校してしまったからだ。
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