通学路

6/13
前へ
/13ページ
次へ
「カナ」も小学校の時の同級生で入学してから卒業するまでずっと同じクラスだった。 カナはウエハラとも仲が良くて昼休みに、三人でキャッチボールをした事を覚えている。 二重でぱっちりした目が特徴的で、長い髪をいつも後ろで結んでいた。 運動神経も頭も良く、クラスの男の子にモテていて僕とウエハラもカナの事が好きだった。 僕とカナは同じ中学校だったが、思春期になり照れくさかったのか、あまり会話をした記憶はない。 中学を卒業すると、僕は偏差値の低い工業高校に、カナは県内トップの進学校に入学した。 その後、カナは上京して東京の大学に進学したという話を成人式の時に本人から訊いた。 僕は介護士の資格を取得する為に専門学校に二年間通ったが、結局介護士にはならずに横浜にある自動車工場に就職した。 海の近くにある工場で風の強い日は、辺り一面に潮の匂いがして、鼻と目がむず痒かった。 働きだして一年が経過した頃から僕は、ギャンブルと酒を始めて仕事を休みがちになり、二年目の春に無断欠勤を続けて、そのまま解雇となった。 現在は東京で清掃業のアルバイトをしている。 業務の終わった会社のオフィスや深夜のコンビニの床を棒の先に回転する円盤型のブラシが付いたポリッシャーで研いている。 安月給だがギャンブルは、やめられず二年間で二百万円の借金を背負ってしまった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加