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爺さんの想い
良平は困ったような表情をして俺を見たが、妻の由里子が「もちろんよ」と即答してくれた。
それで良平も渋々了承したようだ。
「多香子の命の恩人で、お爺さまの相棒だもん。私たちの家族みたいなもんだわ」
「まっ、そうだな。しかし、面倒は多香子がしっかりみるんだぞ」
俺はそう言われてニッと笑った。
老いぼれても、まだ小娘の世話になんぞならねーよ。
しかし、多香子は喜んで俺に抱きついてくる。
「やったー。またシェリフと一緒に暮らせるね」
爺さん。そういうことになったみたいだぞ。
俺は頭の中でそう言ったが、爺さんは面白くなさそうだった。
『都会になんぞ、行きたくねー』
それだけ言い残してもう話す気もなくなったのか、すねて頭の奥に消えてしまう……。
そりゃ、ずっと山と森の中で生きてきた人間だ。この土地から離れるくらいだったら、その魂も土の中に埋めて欲しいくらいなんだろう。
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