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気がつくといつの間にか霧が晴れ、ブナの枝に掴まっていたモリアオガエルが俺の顔の横にちょこんと座っていた。
しかし、人間の足音がしてすぐ跳び去る。
捜索に来た者たちが死体の山を見つけたようだ。
どうやら俺は爺さんの命と引き換えに、全身打撲だけで生き残った。
しかも、人間の体に上から押し潰され、全身に夥しい血を浴びたせいだろうか?
まるで爺さんの魂が俺に乗り移った感じがする。
『んなわけねーか?いや、なんか変だぞ』
俺は元々日本狼の血を引き継いでいて、他の犬よりは遥かに賢く霊力も携えていたのだが……プレスされた爺さんの魂で能力が更にアップしていた。
所謂、バージョンアップってやつだ。
人間たちが話している言葉をはっきりと聞き取れて……いる。
「なんてこった。ひでえ有り様だな」
「全滅だ……。村一番のじい様も死んでんぞ」
「まったく、これで昔ながらのマタギ猟も終わりだな」
「おい、じい様の片目の犬が生きてるぞ……」
今までは顔色を見ながら理解していた人間の言葉が、耳で聴くだけで理解できている。
俺はどうしちまったんだろう……。
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