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梟の知らせ
空を飛ぶ梟はシェリフを道路沿いに追って探した。都会へ行くと聞いていたので、家の前に駐車してあった白い頑丈そうな車を目印に上空から眺めている。
梟は夜行性であるが、別に昼間行動できない訳ではなく、鷹などの猛禽類に邪魔されない自由な夜を狩タイムにしているだけだ。
『まったく、大事件だぜシェリフ。どこにいる?』
野兎と狸は殺され、それを知った裏山の動物は逃げ出すか、巣に隠れて森はひっそりと静まり返っている。支配を嫌った鳥は飛び立ったが、安住の地があるとは思えなかった。
その頃、俺が乗るランドクルーザーは秋田自動車道の入り口のゲートを抜け、快適に高速道路を走っていたが、嫌な予感がして後部席の窓ガラスに顔を寄せ、時折、鳥の大群が移動している空を見上げて頭の中の爺さんと会話した。
『なんかあったんじゃねーのか?』
『人間と獣の戦争が始まるとか言っておったからな』
『ん?爺さん見ろ』
遥か遠くではあるが、梟が空を飛ぶのを見つけた俺は三角の耳をピンと立て、喉を鳴らして肉球の手を空に向けたが、こっちを不審な表情で覗き込んでいる多香子をチラッと見てすぐに下ろした。
俺は左目にアイパッチをしているが、爺さんの魂がプレスされてからぼんやりと見えている感じがした。
もしかしたら霊視ってのかも知れないが、まだ幽霊には出逢ってはない。
『爺さん。多香子は俺が変だと気付いているな?』
『ああ、子供の頃から勘の鋭い子だった。この際、内情を説明して協力して貰うか?』
『人間語でか?そりゃマジでおったまげるぜ』
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