第一章

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話は2日前にさかのぼる。 あたし、川島陽菜(カワシマハルナ)は家から一番近いコンビニで、土日だけバイトをしている。 2日前の土曜日も、やっぱりバイトに出ていて、雑誌の入れ替えをしているところだった。 「川島ちゃーん、久しぶり!」 うわ、またこの人。 「クロサキさん、先週も会ったじゃないですか。」 「先週でしょ~?川島ちゃんに会えない1週間って長いんだよ」 彼はこのコンビニのすぐ近くにあるK大学の学生で、毎週のように顔を合わせている。 私がバイトを始めたのが半年前で、その時すでに彼はこのコンビニを利用していたから、かれこれもう半年。 「川島ちゃんって高校生だったよね?」 休日の午後だけど、客はクロサキさんしかいなかった。 「そうですけど…。」 「川島ちゃんの高校、バイト許可降りてんの?」 「いや、ホントはダメですよ?でもバレないし。」 「ははっ、だよね。俺も高校の時そうだったし。」 クロサキさんと顔を合わせるようになってからは、半年だけど、 こうして話すようになったのは、ほんの2ヶ月前くらいだった。 クロサキさんは、いわゆる『イケメン』で、実際顔だけ見たらかなりのタイプなんだけど…、 初めて話した時からの、ちょっとチャラチャラしてる感じが慣れなくて、未だに下の名前や、高校は教えていなかった。 「じゃあ、俺、明後日から忙しくなるからさ。その準備あるんでもう行くよ。」 「え、ちょっと、せめて何か買ってって下さいよ。」 私が笑いながら言うと、そうだそうだ、なんて笑いながらジュースとパンを買って帰っていった。
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