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「俺の理想ー?」
奴は空を仰ぎ口を突きだした格好で少し考えるふりをし、言った。
「俺の理想は、銭奧みたいな子」
「……はぁ、………俺?」
一瞬、意味がわからなかった。満面の笑みで放たれたその言葉は、どうも俺を指しているようだ。
「そ。銭奧みたいに綺麗な顔立ちで、ちょっと目尻がツンとしてて、唇がきゅって…」
「どんだけ観察してんだっ!!キメェ死ねっ!!!」
「あおぶっ…」
千田があまりに純粋にそんなことを言い放つから、あまりに純粋に見つめてくるから、つい思い切り腹に蹴りを入れてしまった。
顔が熱くなっていく。わかる、この火照り。
けどこれはきっと、奴のバカさ加減や何やらにイラついたから。そして夏の暑さのせいだ。
俺は自分に言い聞かせた。
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