第5話 縁結び再び

2/47
1566人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
俺は湯の中で腕を上げ、指で自分の頬に触れた。腕や頬からは戦いで負った傷が綺麗に消えている。 俺は感嘆とともに指に光る指輪を見る。 美奈から借りた指輪。 医師に後遺症が残るとまで言われた傷であったが、指輪の魔力は治してしまった。 今回、指輪が増幅したのは、傷に効くと言われているこの温泉の効能だ。 俺は湯から上がり、服を着て共同浴場を出る。 そこは温泉街の広場となっており、観光客、療養客らであふれていた。 ここは有名な温泉地であり、俺が訪れたのは美奈のすすめがあったからだ。夏奈子から俺の負傷を電話で聞いた美奈は、指輪が言い伝えや御利益だけでなく、効能をも増幅する事を明かし、実家の近くにある温泉地へ招いたのだ。 俺が湯煙の漂う広場を眺めていると、人混みの中から目鼻立ちの整った若い男が駆け寄ってきた。 俺の後輩、矢崎章介だ。 章介は俺を送り届けた運転手としてここにいる。
/328ページ

最初のコメントを投稿しよう!