第1話 裾踏姫

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毎年夏休みになると、俺は祖父の田舎へ泊り掛けで遊びに来ていた。 大抵、大学生ぐらいになると、何もない退屈な田舎などには興味を無くし、足が遠のくものだが、俺は夏の一つの楽しみにしていた。 なぜなら、その村の夏祭りがユニークなものだからだ。 その祭りは山の麓の神社で行われ、夜ともなると皆が浴衣を着て集まってくる。 ただし、男性が着てくる浴衣は普通のものではなく、通常より丈の長いものである。 そして、男達はその余った裾を後ろにずるずると引きずりながら縁日を歩き回るのだ。 男達の目的はただ一つ、女性に自分の裾を踏ませることである。 これは祭りの夜、女性に着物の裾を踏まれると、その女性と永遠に結ばれるという言い伝えがあるからだ。 俺はこの祭のために田舎へ来ているようなものであり、この夏も張り切って祭りへと出掛けた。
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