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町中に綺麗な鐘の音が鳴り響いた。
何故こんな中途半端な時間になるのかと疑問を抱いたとき、轟音が鐘の音を打ち消した。
気が付けば瓦礫の山に仰向けに倒れていて、手足を動かせなくなっていた。
首を横に傾けると、すぐ隣にも自分と全く同じ姿勢で倒れている子供がいた。
自分と違う点があるとすれば、その子供には右手がなくて、代わりに大きな金属片が胸から生えているということだ。
あの金属片は見覚えがある。この部屋で一番大きな窓の枠だ。
今となっては窓も壁も柱も天井も区別はつかない。全て床に貼りついてしまったようだ。
手足が動かないので誰かを呼ぼうとした瞬間、喉の奥から何かがこみあげてきて、口のなかを鉄の味で満たした。
あまりの不味さにそれを吐き出すと、手足の先から凍り付くような感覚を覚えた。…どうやら吐き出してはいけない物だったようだ。
強烈な眠気に襲われ、何もかもどうでも良くなった。隣で横たわる子供も、瓦礫になった建物も、………自分が何者かさえも。
もう一度空を見上げたとき、通り過ぎた物は鳥だろうか?
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