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寝室に戻り、とりあえず脱ぎ捨ててあったジーンズを身に着け、メリーさんと玄関に移動する。
玄関には、何故かグレーの室内用スリッパが揃えて置いてある。
「このスリッパ、メリーさんの?」
「はい」
「スリッパで電車乗って来たの? ていうかこれからコンビニ行くんだけどスリッパでいいの?」
「ああ、ちょっと嫌ですけどいいです。スリッパで行きます幽霊だし」
そもそも幽霊って足ないよな。
「そんなこと言われても知りませんよ、気がついたらスリッパで河原歩いてたんですから」
口をとんがらしてメリーさんは言う。私はスニーカーを履き、スリッパをつっかけたメリーさんとともに玄関を出る。
駅前にあるコンビニまで二人で歩く。
私の部屋は駅から五分かからないので、まあスリッパでも大丈夫と言えば大丈夫だが、明日はせめて靴くらい買ってあげなきゃな。
メリーさんは、俯き加減で私の二メートルほど後ろを歩いている。私は足を止めて言ってみる。
「なあメリーさん」
「なんですか」
うお、機嫌悪い。あと目つきも。
「手を繋げとは言わんけど、並んで歩いてくれるとおじさん嬉しいな。
ほら歩道もこんなに広いし並んで歩いても大丈夫」
「幽霊と並んで歩いて嬉しいですか?」
「そりゃもう嬉しいよ、メリーさんみたいに若くて可愛い女の子と並んで歩く機会なんてこの数十年なかったし」
まあ若干誇張はあるけどな。
「わっざとらしい」
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