1美しい生物

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「あ、ハタさん」 「まじだ、さようならー」  男子生徒の三人組とすれ違い、間の抜けた挨拶をされる。 「横沼、ボタン開けすぎ」  左端にいた横沼は、なにをアピールしているのかワイシャツのボタンを第4ボタンまで開けている。 「だってあっちーんですもん」 「またバスケ?」 「いや今日はサッカーしてた」  この三人は、帰宅部のくせに運動部に混じってバスケだのサッカーだの卓球だのをするのが好きなやつらで、初めこそ苦情が殺到していたものの、どんなに注意してもこりずにやめないどころか頭を下げて見逃してくださいとまでした変わり者だ。  剣道部の副顧問の肩書きをもっているおれも、この三人組には手をやかされた経験がある。  が、遊び半分でやっているわりにはどのスポーツも超絶うまくて、その部活のエースにまでは匹敵しないものの、上位に格付けされるレベルだ。  初めこそ煙たがって迷惑がっていた生徒も、「今日はうちにこいよ」と誘うまでになった。 「きーてハタさん! 今日飯島先輩に一回勝ったんすよ!」  と、森田。ちなみに飯島は三年の元卓球部エース。時期的にもう引退しているが、まぁ受験の息抜きに顔をだしたというところだろう。  おれも何度かあいつが戦っているところを見たが、あいつに一勝するとはいよいよ森田も超人化してきたな。 「でも三回負けてたじゃねーか」  と横沼。四戦中一勝三敗ということか。 「うるせーおまえなんか今日は全然勝ててなかったろ!」 「こらこら。廊下で喧嘩するな」
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