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「ん…お兄ちゃん」
「おはよう。目は覚めたか?」
雄架はゆっくりと目を開けた。今日も変わらぬ一日が始まる。
「うん。目、覚めたよ。今日もいい天気だね。」
「ああ。いい天気だ。それよりも、腹が減って死にそうなんだが。」
「あ、ごめん。今すぐに作るね。」
ベッドから飛び降りた妹は、駆け足で台所に向かった。少々言い方が大げさだったか。俺は妹の反応に面白がりながらリビングに向かった。
「あ、お兄ちゃん、えすじの助持っていくんだ。」
妹は自分で作った卵焼きを食べながら言ってきた。毎朝、朝食を作ってくれるのは妹だ。妹の料理の腕は中々のものだ。朝食と夕食は妹の手料理を頂いている。毎日の大切なエネルギーだ。
「そうだ。今年から軽音楽部に入ってな。今日はこいつが必要なんだ。」
「お兄ちゃんが…部活…」
妹は上の空になっていた。箸でつかんでいたハムを落としそうになる。
「おい…雄架?」
「あ、ごめんごめん。頑張ってね。えすじの助もよかったね。」
何なんだ?俺が部活をやって、何かあるのか?妹は、たまに俺が何か始めると上の空になる。よくわからない奴なんだ。ちなみに、さっきから妹が言っている「えすじの助」というのは妹が勝手につけた俺のギターの名前だ。俺もたまにそう呼んでしまう。変な名前付けやがって。
「じゃあお兄ちゃん、行ってらっしゃい。」
「ああ。行ってきます。」
毎朝、妹は笑顔で俺を送ってくれる。風が丘高校は、少々時間がかかるのだ。そのため、妹よりも家を三十分ほど早く出ている。
今日はギターを背負っているので少々背中が重たい。しかし、重荷とは感じなかった。俺も学校で、やっとやれることができたのだ。我ながらとても嬉しかった。今日から、今までとは学校生活が少しばかり変わるのだ。
「健一、何でお前ギターなんて持ってきてんの?」
「軽音楽部に入ってな。腕も認めてくれたから、持ってきたんだ。」
学校について教室に入ったら真っ先に秋和が話し掛けてきた。秋和は少し驚いている様子だ。他のクラスメイトも少し驚いている。
「入ったのか。どうだった?」
「早速仲間ができたぞ。いい奴だよあれは。」
「男?それとも女か?」
「女。長咲春希っていう子だ。」
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