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秋和は唖然とした。まぁ無理もない。こいつは女運がこれっぽっちもないからな。俺は結構色々な女の子の相手をしてきたが、こいつと一緒に歩いている女を見たことがない。哀れといえば哀れだな。
「どういうことをしたんだ?一日目の部活は?」
「長咲と会って、部活についていろいろ教えてもらって、一緒に下校した。」
また秋和は唖然とした。
「なぁ、健一。」
「なんだよ。顔が近いぞ。」
「今度は逃がすなよ。」
「はい、席に着いて。ホームルームはじめるよ。」
ともえ先生の一言で、教室は静まり返り、俺と秋和はそれぞれの席に戻っていった。
「あれ、健一くん、ギター持ってきたの?」
ともえ先生葉俺のギターに反応してくれた。何か個人的に、凄く嬉しかった。部活が楽しみになってきたな。こんな気持ちを持ったのは初めてなので、新鮮だった。そして、いつも通りにホームルームが始まった。
四校時目の終わりを告げるチャイムが鳴り響いて、授業は終わりを迎えた。風が丘は四十分の授業を四時間やった後に食事なので正午を過ぎてしまう。もちろん大変腹が減る訳だが、減りすぎると何も感じなくなるんだよな。人体は不思議だ。感覚的にはすいていないんだが、肉体的には限界を超えているので、秋和といつも通りに食堂で昼食を取る。はずなんだが…
「鎌滝、呼んでるぞ。」
「なんだ?」
教室の入口を見ると、一人の女子が俺に手を振っていた。長咲が俺に会いに我がBクラスにきたのだ。俺に用があるらしいな。
「どうした?」
「一緒にご飯食べようと思って。良いでしょ?」
長咲は上目遣いで俺に聞いてきた。今朝思った事を思い出してしまった。やはり長咲は妹に似ている。たまに妹も上目遣いという技を使うが、妹同様、破壊料は抜群だ。むぅ、断れない。
おれは、少し迷うそぶりをして秋和を見てみた。秋和はそっぽを向いて手を振った。行っていいということだろう。
「分かった。たまにはいいだろう。」
「やった。ありがとう。」
長咲は跳ねて喜んでいた。秋和には悪いが、男同士よりは良い時間を過ごせるだろう。ちょっとばかり聞きたいこともあったし。
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