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俺たちは二人で学園内の中庭のベンチに腰を下ろした。ここは公園のようになっていて、俺たちの座っているベンチの後ろには、そこそこ大きめの木が立っている。ちょうど中庭の真ん中に位置している。ここでは、なかなかいい空気を吸うことができる。風が丘は、こういった設備は万全だ。
「今日もいい天気だねぇ。」
長咲は笑顔を浮かべながら自分の弁当を開けていた。丸くて可愛らしい弁当箱だ。中には丁寧におかずが盛り付けられていた。とても綺麗だ。
「なぁ、何で俺の名前知ってたんだ?」
「え?」
俺は中庭に入る前に買ったコロッケパンを開けながら聞いてみた。部室では名乗ってなかったし。昼食時の雑談にはもってこいだ。
「それは、鎌滝くん、あのとき名前教えてくれなかったから。気になって調べちゃったの。駄目だった?」
顔に朱を浮かべて、逆に聞かれてた。というか、女の子って照れるとこんなに可愛いものなのか。それとも、妹に似てるからそんなふうに見えるだけなのか?
「そうか。何か余計なことさせたかな。すまん。」
「いいよ。ちゃんと知れたから。それに…」
「ん?」
「え?あ、いや、何でもないの。えへへ。」
どうしたんだろう。優しく溶けるような、そんな微笑みだった。長咲は笑ってごまかすと、弁当の中にあった黄色い綺麗な卵焼きをつついた。これを飲み込んで、長咲は弁当を完食した。
「ふぅ、ごちそうさまでした。」
丁寧に手を合わせてそういった長咲は、弁当箱を閉めて食事を終わらせた。俺も残り少ないパンを口の中に放り込んで、長咲の真似をした。結構恥ずかしかった。
「なぁ、これ恥ずかしくないか?」
「だって、世界には食べ物を食べられない人もいるんだよ。感謝しないと。」
この子はそんな果てしない事も考えているのか。俺とは偉い違いだ。
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