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俺は食えることは普通だと思っている。しかし長咲の言う通りだ。世界には泥水しか飲めない奴らもいるんだよな。それに比べて日本は素晴らしい国だ。
「じゃあ、教室戻るから。ここで。」
「ああ。じゃあな。」
「うん。部活で会おうね。鎌滝くん。」
そして長咲は校舎に消えていった。そうか。わざわざ調べてくれたんだ。おそらく水谷先生に聞いたんだろう。自分で職員室に行ってまでして。気まずかっただろうに。名前、教えてやればよかったな。
「おーい、健一ぃ。」
「ん?」
自販機の前で食後のドリンクを何にしようか悩んでいると、秋和が小走りでやってきた。どうしたんだろうか。
「はぁ、俺も飲もう。」
と言うと、秋和はズボンのポケットから百円玉を取り出して自販機に挿入、いちご牛乳を購入した。俺は高校の敷地内の自販機では牛乳しか購入したことがない。ちょっとした自慢だ。
「お前、また牛乳かよ。」
「だって美味しいじゃん。何かまろやかな風味がある。」
「理解できない。」
秋和は不思議な顔をしながらいちご牛乳を啜っていた。昔から秋和は、甘いものが大好きなのである。特にいちご牛乳はお気に入りらしい。いちご牛乳は好きなのに、普通の牛乳は飲まない。吐き気がするらしい。そっちの方がよっぽど理解不能だ。いちご牛乳は飲めるのにな。
「で、どうなんだ?」
教室に戻り、午後の授業の準備をしていると、秋和がふっと話しかけてきた。何がどうなんだろう。
「長咲との関係だよ。順調か?」
「まぁ普通に仲良いけど。どうかしたか?」
「なんかやってくれたりしなかったのかよ。一緒に昼飯食ったんだろ?食べさせてもらったとか。」
「いや、そんなことはされてないな。けど、俺の名前を調べたとは言ってたな。」
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