プロローグ ~出会い~

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桜が舞い落ちる、春。空は雲ひとつない快晴だった。周りには、俺の同志たちがいつものように歩いている。しかし、今日はいつもとは違う。何かって? そう。今日から俺たちは風が丘高等学校の第三学年に進級するのだ。つまり、今日は始業式という訳だ。 しかし、時が経つのは早いもので、俺もこの一年を過ごしたらもう社会人である。ちょっと前までは中学生だったのにな。高校の生活に溶け込みすぎて、時の流れを意識していなかった。 学校に着くと、入学式の看板が校門の前に立て掛けられていた。入学時のことを思い出すな。あのときは期待に心を踊らされていた。色々とな。今となっては、良き思い出だ。 風が丘の校長は、よく喋ることで生徒の間でも有名である。先生方もあくびをしながら聞いていた。短くて三十分、長くて一時間喋り続ける。よくそんなに話題が持つなとたまに感心してしまう。どうせ今回の始業式も長ったるい話を聞かされるんだろうなと思っていると案の定、三十分は堅いと思われる話題を持ち出してきた。そんなに長い話を聞いていられるほど、俺は生真面目ではないので、適当に聞き流すことにした。 しばらく校長の話を聞いていると、思った。そういえば、俺は中学のとき大変だったんだよな。 自分が覚えている限りだが、確か小学校入学のときだったかな。それから中学卒業までの間、ひどいいじめを受けていた。数えると、約九年だ。あるときは、自分に絶望し、生きている価値なんてないなんて思い込んで、首筋にカッターを当てたことがあった。それが親に見つかって止めてくれたんだ。自分の子供が死んで喜ぶ親はこの世には存在しないからな。その止めてくれたときの親の顔は今でも忘れることはできない。涙も流してくれたしな。 まぁ、高校に進学して、いい仲間と出会ってからは、いじめなんてなくなったけどな。やはり人は成長するものだ。中学のときとふざけ方もまるで違うし、思いやる気持ちもかね揃えている。成長しない人間なんていないのだ。 とまぁ、こんな昔のことはさておき、校長の話が終わったらしい。時間を見ると、十五分しか経っていなかった。予想以上に早く話が終わって少しがっかりしていると、いつも司会をやらされている禿げた先生が締めて、無事に卒業式は終わった。このあと、下駄箱の掲示板に掲示されているクラス名簿をみて、新しいクラスに移動するらしい。どこのクラスだろうな。
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