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まぁこいつのおかげで俺も普通に学校に通えるんだがな。友達がいない学校生活なんて、想像したくもないね。昔の俺のような。
「じゃあ、私の知らない人も結構いるので、自己紹介からやってもらいましょうかね。じゃあ出席番号一番の人から。」
俺は鎌滝なので、少しばかり時間がある。しかし、一番の奴が手早く終わらせてしまったので、みんなの自己紹介も数秒で終了してしまった。
「次は…鎌滝くんね。」
「あ、はい。」
こんなこともあろうかと、ネタは用意してあるぜ。っていうか、自己紹介なんて自分のことを話せば終わるんだけどな。自分のことは自分にしか分からない。他人に分かられてたまるか。
新しいクラスメイトの自己紹介が一通りすむと、この日は解散となった。始業式の日ってのは、大抵早く終わるものだ。俺はそそくさと教室を出たが、秋和に捕まってしまい、結局いつもと変わらず秋和と帰っていた。まぁ、一人で帰るよりはいいけど。
「お前さ、クラスにタイプの子いる?」
「何を言い出すかと思えば。」
「だってよ、お前は中学のときから全然女と付き合ってないじゃん。そういうことに関心ないのか?」
わざとだろう。大袈裟にリアクションをとりながら話付き合ったことは一度もないな。というか、他人に恋愛感情を抱いて付き合うことがどういうことか想像できない。人は他人を完全に理解することは難しい。というか、できない。もし誰かと付き合ったとして、間違った振る舞いをして別れることになったら、その子には、一生癒えることのない心の傷を受けることになる。事実、俺がそうだからだ。中学のときに好きだった人には見事にフラれてしまった。その癖今でも忘れられない。このように心に残ると、どうしようもなくなってしまう。想いを伝えられずに、逢いたくても逢えない苦しみは、本当に辛いものだ。
「ないな。不幸になるだけだ。」
「こいつ、全然わかってないな。不幸になるのはお前が不器用だからだ。」
「…なんか色々と思い出してきた。気分が悪い。また明日な。」
「ああ。じゃあな。」
全く、秋和は何を考えているんだ。たまに秋和と話してるとイライラすることがある。俺は秋和を一人置いてツカツカと早歩きをした。なんで新学期早々こんな気分にならないといけないのだろうか。今回の苛立ちは俺の思い込みによって生まれたものだ。どうして忘れられない。他に夢中になれるものがないからか?
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