1人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前、部活やるの?入部届もらってたろ。」
昼休みは基本的に秋和と過ごしている。今日は妹が弁当を作ってくれたので、食堂のバルコニーで昼食を頂くことにした。今日は天気もいいし、結構暖かいしな。
「そんな大きな声で言うなよ。普通だろ。」
「だってお前、部活は面倒だからやらないって言ってたろうが。」
「気が変わったんだよ。」
妹が作った白だしをふんだんに使用した、きれいな黄色い卵焼きを食いながら、秋和の文句を仕方なく聞いているた。秋和がいちご牛乳を吸い上げて、急にマジな顔になって言った。
「大丈夫か?中学のときのこと忘れたか?」
俺は、箸の動きを止めた。そうだ。あれ以来、部活には入らないようにしていたんだ。面倒と言うのは口実で、本当は残酷な過去を持っている。なんというか、酷い部活だった。思い出したくもないくらい酷いことをされて、あげくの果てに追い出されたんだ。
「またあんな感じに扱われるかもしれないぞ。大丈夫か?」
「大丈夫だろう。できない事じゃないし。」
「…忠告はしたからな。」
そう言い終わると、秋和は飲み終わったいちご牛乳のパックを捨てに行った。
俺も食後に飲もうと思って買った缶コーヒーを開けた。
秋和が早く来いと急かしてきたので、俺はコーヒーを一気に飲み干した。好きな味のコーヒーだったのに一瞬しか味わえなかった。ほんの少し秋和を恨みながら、二人で教室に戻った。
今日の午後の授業は国語が連続だった。教室に戻ると、もうともえ先生は教卓にいた。早い。
「おかえり。さぁ、席についてね。」
笑顔で会釈してくれたので同じように笑顔で返事を返した。
「おい、健一。」
「なんだよ。」
「にやけてるぞ。先生に気でもあるのか?」
にやけてるのはお互い様だろう。
「お前と同じにするなバカ。」
「バカとはなんだこのバカ。」
「秋和くん、静かにしてね。」
クラスから笑いが湧いた。秋和は微妙に照れて口を閉じた。こいつにも、羞恥心はあるのだ。一応、人間だからな。
こうして、授業が始まったわけだが、俺は基本的にまじめに授業を受けたことは数えるほどしかない。そのため、定期試験のときは大変だ。俺は、試験の二週間くらい前から本気を出す。普段からきっちりやっていたら、身が持たないからな。当然、今回の授業も例外ではなかった。
最初のコメントを投稿しよう!