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調べたところ、軽音楽部の顧問は「水谷翔平」というらしい。秋和によると、若いけど鬼教師だそうだ。俺はパンクロッカーのような人を想像している。練習をさぼっていると激怒するようなお兄さんを。
「あの、B組の鎌滝です。」
「誰に用事?」
「あの…水谷先生に。」
動揺していた。俺は職員室にノックしたときのこの空気がどうも苦手なのだ。職員室の入り口近くにいるほとんどの先生ににらまれるからな。
「俺が水谷だけど、何?」
うわぁ、と言いたくなるような人がきた。アメリカのロックんローラー並みの長髪に、狐のような細く鋭い目付きだった。身長もあるから、より強そうな雰囲気を出している。ギター上手いんだろうなぁ。
「あの、入部したいんです。軽音楽部に。これ、入部届です。」
「んー」
水谷先生は俺と入部届を見比べていた。先生の視線は、俺を切り裂くような感じになっている。結構怖い。
「ギターやってんの?」
「はい。六年やっています。」
「曲弾ける?」
「二、三曲なら。」
「そうか。」
少しの間、沈黙があった。俺を入部させるか否かを悩んでいるのだろう。条件的には悪くないはずである。というか、ここでしか活動できる場所がない。
「…分かった。入部するといい。ただ、練習でねをあげたら、分かってるな。」
「大丈夫です。六年間諦めずにやってきたんですから。」
「そうか。なら頑張れよ。」
「あ、はい!ありがとうございます。」
先生は笑顔をくれた。外見はすごいけど、笑うととてもいい顔をしていた。どこか可愛いような感じだった。人は見かけによらないとはこのことか。何か嬉しいのはなぜだろう。
最後に水谷先生と会釈して、俺は職員室を離れた。軽音楽部に挨拶にいかなくては。
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