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「日和ったら気が早いのよ?」
伶はくすくすと笑いながら、赤ちゃんの名前全集を持ち上げる。
「もういくつか候補を絞ってあるのか?」
「日がなこれとにらめっこしながら500くらいを箇条書きにして、あれでもないこれでもないと唸っているわ」
「それは……すごいな」
「ふふ……」
嬉しそうに微笑む伶。
そのお腹は微かに膨らみ始めていた。
「芙蓉」
「ん?」
伶が買い求めた本を手に振り返る。
「貴女も気が早いわよ?」
「……だって離乳食なんざ今までに作ったことがないからな。今から予習して置くに越したことはないだろう?」
伶は和やかに笑った。
と。
芙蓉の携帯電話にメールが届く。
―――今何処にいるの?
「朔からだ……」
「早く返信して上げなさい」
「ん」
伶の部屋にいる、と返信した直後。
室の周りを囲む空気が禍々しいものへと変わる。
「……伶」
声を潜める芙蓉。
「え?」
「動けるか?」
「……何?どうかしたの?」
怪訝そうな顔をするばかりで状況を読めないでいる伶を急かすように立たせて奥の間に追いやる。
「芙蓉?」
「しっ!……静かに」
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