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「伶、具合はどう?」 「大丈夫よ」 日和と伶の室を訪ねた芙蓉を出迎えた伶の手元には子どもに関する本が山積みになっていた。 「根を詰めたらしんどくなるぞ?」 「ふふ……ほどほどにしているわ」 「そうか」 「芙蓉……貴女こそどうなの?」 「もうすっかり元気だ」 「ご飯は?」 「食べてる」 「でも吐いちゃう……そうじゃないの?」 「軽いものならもう大丈夫」 「芙蓉……」 そっと抱き寄せる。 「伶?」 「今日の予定は?」 「ない」 「朔君は?」 「氷室様のところに行ってる」 「そう」 氷室邸の地下牢に奏子がいるのは伶も知るところであり、芙蓉が気を揉むのもわからないではなかった。 「部屋で待っていなくていいの?」 「朔が部屋を離れた途端に続々といろんな人が乗り込んでくるんだ」 「そう……」 「相手をしないといけないのはわかっているんだが……四六時中となると気が滅入る」 「そうね……いいわ。今日はここでのんびりしていきなさい」 「ありがとう」 甘えるように芙蓉は伶の肩口に額を寄せる。
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