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人間も妖怪も温かく迎える命蓮寺。
ここには人間と妖怪の共存を目指す僧侶・聖白蓮とその仲間達が住んでいる。
「聖が大事な話って、何だろう?」
その命蓮寺の廊下を1人の妖怪が歩いていた。
「…寅丸星です。入ります」
妖怪は静かに障子を開けて部屋に入る。
部屋には既に白蓮と、4人の妖怪が座っていた。
部屋に入った妖怪も4人の隣に正座する。
「それで…姐さん、大事な話とは?」
4人の妖怪の中の1人が口を開く。
「話というのはですね。命蓮のことなのです」
「命蓮…」
妖怪達はその名前に聞き覚えがあった。
白蓮に法力を与えた高僧で、白蓮の弟だった者の名前だ。
「しかし、姐さん。命蓮はもうこの世には…」
「ええ、わかっています」
白蓮は凛として言った。
「今この世にいないならば…この世に呼べばいいのです」
「…はい?」
船長のような帽子の妖怪が思わず聞き返す。
「簡潔に言うとですね…命蓮を復活させる儀式を行いたいのです」
妖怪達は顔を青くした。
人間を蘇らせる儀式は並大抵ではできない、恐ろしい儀式だということを、皆が知っていたからである。
「聖、もう一度よく考えてからのほうが…」
「何度も考えて出した答えです。人間と妖怪の共存できる世界をつくるには、命蓮の存在はとても大きな力になります」
「そう…ですか…」
船長帽の妖怪はそれ以上は何も言えなかった。
「儀式は明日の夜中に行います。私は今から精神力を高めに座禅を組みますから、誰も私の部屋には近づかないようにお願いします」
そう言って白蓮は部屋を出た。
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