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そして、予定の日の夜がきた。
時間は11時20分過ぎ。
「さて、一応手順を確認しておきたいのですが…」
白蓮が口を開く。
「はい。まずは聖が命蓮の形見の数珠を見に着け、我々が3人で天の試練…すなわち雷を呼び、聖に落とします」
寅の妖怪がそこで一旦言葉を切った。
「星、続けて」
「…はい。聖はその身に雷を受けながら経を詠み終えれば、儀式は完了です」
「わかったわ、始めましょう」
妖怪達に背を向けると、白蓮は庭のほうへ歩いて行った。
「命蓮が生き返るなら、これくらい…!」
白蓮の頬を一筋の涙が伝った。
寺の庭には陣が描かれていて、その中心に白蓮が立った。
後から来た妖怪達は、それぞれ陣の周りに等間隔に立つ。
3人をつなげば正三角形ができそうな程、正確な等間隔だ。
「では、聖。数珠を…」
「…着けたわ」
白蓮は数珠を着けた腕を寅の妖怪に見せる。
「では、いきます!」
寅の妖怪が手を天にかざすと、黄色い光が天に向かって走る。
「はあっ!」
続いて船長帽の妖怪が同じようにすると、青い光が天に伸びた。
「ふんっ!」
最後に尼の格好の妖怪が手をかざすと、白い光が天に届いた。
「「「天よ、この者に試練を与えよ!」」」
3人の妖怪が同時に叫ぶと、白蓮に雷が落ちる。
「ぐ…っ!」
白蓮は一瞬顔を歪めたが、すぐに経を唱え始めた。
「白蓮…」
「ワシらは見守ることしかできぬのか…」
外から鼠の妖怪と雲の妖怪も見守る。
白蓮は経を半分以上詠み終えていた。
「(よかった、この調子なら…)」
寅の妖怪がそう思ったその時、突然雲の間から黒い稲妻が走り、白蓮を襲った。
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