第26章

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   「いい兄妹だね」 「…そう?」 「うん。そう思うよ。 お兄さん見てたら、俺も妹が欲しくなった。 きっと、可愛くて仕方ないんだろうな。 だからこそ、心配せずにはいられないんだよ」 「……」 永友皐月は兄の方に再び視線を向け、ふっと微笑んだ。 「私がいなくなったら、お兄ちゃんもいよいよ寂しくなって本気でお嫁さん探し始めるかもね」 「そうかもしれないね」 「私、…彼と結婚したら、いずれシンガポールに移住することになると思うの。 まだ先の話だけど」 「…仕事の関係?」 「ええ。本社があっちだから、たぶんいつかは引っ張られるだろうって」 「…そう」 「そうなったら、どうなっちゃうんだろ、あの人」 俺はそのことを告げた時の永友兄の顔を思い浮かべた。 「…泣くだろうね」 「…泣くわね…」 顔を見合わせ、二人で笑い合う。 年の近い、少し気の強い妹がいたらこういう感じなのかな、と、何となく思った。 「そろそろ、行くよ」 俺は残りのジンライムを飲み干し、静かにコースターの上にグラスを戻した。 「もう?」 「うん。明日、早めに出勤しないといけないし。 車を学校に置いて来たんだ」 「そう。…じゃ、そこまで送る」 「いいよ。目の前の通りでタクシー拾うから」 「じゃ、階段を下りるところまで」 俺に続くように、永友皐月も立ち上がった。 .
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