第3章

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我が高の放送部は、副顧問の自分が言うのも何だが、かなりレベルが高い。 それは、昼休みに流している『恋パラ』という番組への評価の高さから見ても、客観的事実だと言える。 『恋パラ』というのは、今年で15周年を迎える、歴史ある昼休みの放送番組だ。 投稿されて来る生徒達からの恋愛相談に対して、放送部員の担当者が、自分なりのアドバイスをする、という単純なものだが、 シンプルなだけに、番組が面白くなるかどうかは、担当者の力量にかかって来る。 現在の担当者はその期待を裏切ることなく、毎日感心させられるほどの番組を創り出してくれていた。 ただ、…現在、『恋パラ』は、人材不足という大きな問題を抱えていた。 月曜日と水曜日と金曜日を担当していた部員が、遠方への引っ越しや受験を理由にした退部などで、次々と引退してしまったのだ。 そのため、担当が不在の3日間を含め、今のところ、2人の『恋パラ』担当者たちが5日間のシフトを回さなければならない状態だった。 パワーを使う分、2人の負担がかなり大きいので、本当なら早急に穴を埋めたいところなのだが、…誰でもいいというわけではないのが、難しいところだ。 これだけの人気番組の質をキープするためには、やはりそれだけのセンスがある部員でないと、曜日を任せるわけにはいかない。 今、放送部員の人数は7人。その中で、番組を持てるだけの実力があるのは2人。 残りの5名には、下校放送の担当と『恋パラ』のアシスタントを務めてもらっている。 正直なところ、出来れば、あまり部員数は増やしすぎず、少数精鋭でシフトを回したい。 あくまで求めているのは、『恋パラ』を任せられる部員であって、…それ以外は足りているので、募集はしていなかった。 でも…。もしここにいる全員が本気で放送に携わりたいと思っているとしたら、その気持ちを無視するわけにはいかない。 全員の入部を認め、大所帯になってしまった場合のリスクについて考えているうちに、スピーカーから下校放送用のBGMが流れ始めた。 しばらくして、奈良崎が原稿を読み始める。 「あの、先生」 女性徒のうちの一人が、俺の顔を覗き込んだ。 .
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