第3章

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***** 職員室のパソコンを借りて放送部の雑務をこなしていると、隣のもう一台のパソコン席の椅子を誰かが引き出した。 「お疲れさん」 顔を向けると、同じ社会科の教師で、サッカー部のコーチを務める榊先生が、ジャージ姿でどっこいしょと椅子に腰掛ける所だった。 「お疲れ様です。…早いですね。 サッカー部の練習、終わりですか」 榊先生はパソコンの電源を入れると、USBメモリを取り出した。 「今日は1年が何人か入って来たから、お手柔らかにしておいたんだよ。 1日で逃げられちゃ困るから」 起動を待ちながら、うーん、と伸びをする。 榊先生は、若く見えるが、実は教師歴13年の大先輩だった。 俺の教育実習も担当してくれた人で、赴任してからも、何かと相談に乗ってもらっている。 「あの、榊先生」 「ん?」 「榊先生のクラスの、…1-Aの坂口という生徒についてなんですが」 「…おお、坂口な。 あいつがどうかしたのか」 「実は、…彼女をスカウトしたいと思ってまして」 「スカウト?」 少し眠そうだった榊先生の目が、ぱちぱちと瞬たたかれた。 .
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