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職員室のパソコンを借りて放送部の雑務をこなしていると、隣のもう一台のパソコン席の椅子を誰かが引き出した。
「お疲れさん」
顔を向けると、同じ社会科の教師で、サッカー部のコーチを務める榊先生が、ジャージ姿でどっこいしょと椅子に腰掛ける所だった。
「お疲れ様です。…早いですね。
サッカー部の練習、終わりですか」
榊先生はパソコンの電源を入れると、USBメモリを取り出した。
「今日は1年が何人か入って来たから、お手柔らかにしておいたんだよ。
1日で逃げられちゃ困るから」
起動を待ちながら、うーん、と伸びをする。
榊先生は、若く見えるが、実は教師歴13年の大先輩だった。
俺の教育実習も担当してくれた人で、赴任してからも、何かと相談に乗ってもらっている。
「あの、榊先生」
「ん?」
「榊先生のクラスの、…1-Aの坂口という生徒についてなんですが」
「…おお、坂口な。
あいつがどうかしたのか」
「実は、…彼女をスカウトしたいと思ってまして」
「スカウト?」
少し眠そうだった榊先生の目が、ぱちぱちと瞬たたかれた。
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