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「とにかくお前は、口が軽すぎなんだよ。もっと芹沢を見習って、黙って、男らしく…」
「芹沢さんも一緒に居ましたよ。
『やめろよ、お前―』とか言いながら、一緒にうひゃひゃしてましたけど」
「……」
俺はどっと疲れが出て、真嶋の白衣を放した。
「もういい」
「先輩、元気出して下さい」
ポン、と肩に置かれた手を、ぺしっと払う。
「…来週の土曜日は本当に予定が入ってるから、悪いけど他の人を誘って」
「えーーー」
俺はふいと顔を逸らし、隣の校舎の屋上に目をやった。
…あ。
バレーボールをする輪の中に、坂口万優架の姿を見つけ、俺の意識はそちら側へ飛んだ。
「先輩が居ないと、つまんないなあー」
真嶋の声を方側の耳だけで聞きながら、その様子を観察する。
…いるんだよな、こういう、何でもできる生徒って。
坂口は、バレーボールも抜群に上手かった。
飛んでくるボールを、器用に、まんべんなく輪の中に回して行く。
感心していたその時、その円陣に、誰かが近づいて行くのが見えた。
黒髪の、制服姿の女性徒。
…あれは…。
伸び上がって、その顔を確認しようとした時だった。
坂口の手から放たれたれた球が、大きく逸れた。
――危ないっ。
俺が思わず立ち上がるのと、白いボールが白パンツの顔面を直撃するのが、ほとんど同時だった。
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