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考える前に、俺は屋上の端まで駆け寄っていた。
フェンスにたどり着いたが、隣の校舎とはいえ、数メートルの距離がある。
しかも、目の細かい2枚のフェンスの向こう側なので、群がる女子たちの中心に倒れているはずの白パンツの様子を窺うことが出来ない。
かなりの勢いでボールがぶつかったので、もしかしたら脳しんとうでも起こしているかもしれない。
一旦階段を降りて向こう側に渡ろうか、考えた時だった。
「扉、開けてっ」
切羽詰まった声がしたかと思うと、輪の中から坂口が立ち上がった。
「おっ。力持ち」
いつの間にか隣に立っていた真嶋が呟く。
坂口の背中には、ぐったりとした白パンツが背負われていた。
スカートから覗く白い太腿に思わず目を奪われる。
「おっ。フトモモが白うさぎ。ラッキー」
真嶋が再び呟いた。
女性徒の一人が鉄の扉に駆け寄り、重そうによいしょと開ける。
「ありがとっ」
坂口は、人を一人背負っているとは思えない素早さで、あっという間に屋上から姿を消した。
「カッコいいなあ、坂口万優架。オトコマエ」
真嶋が感心したようにため息をつく。
「ちょっと行って来る」
俺が出口に向かおうとすると、
「あ、先輩。忘れてますよ、樋口一葉」
「真嶋、預かっておいて」
「え、ちょ、先輩っ」
真嶋の声を背中で聞きながら、俺は重い鉄の扉を力を込めて開けた。
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