第4章

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その時、コンコン、というノックの音とほぼ同時に、ガラッと引き戸が開いた。 「こんちはーっす」 入ってきた人物を見て、俺は驚いた。 「塩谷先生、ちょっと気分が悪いんですけど、横にならせてもらっていいですか」 田辺陽平が、のんびりした口調で言った。 「おお、いいよ。奥のベッドを使ってな」 塩谷先生が、ボールペンでベッドを指差す。 「寝てる子が居るから、静かにするんだぞ」 「はい」 田辺は、具合が悪いという自分の言葉を忘れているかのように、はきはきと返事をした。 ベッドに向かって来る姿を見て、気付く。 彼は、右ひざをかばうように引きずっていた。 「…こんにちは」 ぺこりと頭を下げられ、俺は我に返って会釈を返した。 …右ひざが痺れているんだ。 俺は今日子先生の言葉を思い出した。 『…たまにその怪我をした膝が痺れて、歩けなくなっちゃうみたいなの』 発作の前兆だろうか。 すれ違う瞬間に目に入った田辺の額には、うっすら汗が滲んでいた。 塩谷先生のこの様子からみても、彼が保健室の常連であることは間違いなさそうだ。 田辺はベッドにどかっと腰かけると、上着を脱いで傍らのカゴの中に置き、 「それじゃ、おやすみなさいっ」 と大きな声で言って、さっさと布団に潜り込んでしまった。 .
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